北朝鮮の国家プログラム:「偉大なる首領」のための阿片

「論拠と事実」、1996年第48号

1.国家と麻薬ビジネス

 「重度の経済危機に陥っている北朝鮮は、外貨保有量充足のために、阿片取引を広く利用している。ケシは、北朝鮮領土中に散在する10ヶ所以上の大農場で栽培されている。収穫された阿片は、清津市の製薬工場に送られ、精製後、そこから、「白桔梗の根」との無害な名の下に、薬剤として輸出されている。薬草の生産に対しては、全ての農場及び各道に代表者を有する朝鮮労働党中央委員会の特殊課が責任を負う。」

 11月11日に、ソウルでの記者会見において、このセンセーショナルな表明を行ったのは、韓国に政治亡命を申請した北朝鮮の平安南道の元薬剤師、47歳のホ・チャンゴルである。

 北朝鮮に隣接する諸国の全てのしかるべき法保護機構が以前から知っていたことについて、口頭で語られたためとと言って良い。国家水準での北朝鮮におけるそのようなプログラムの存在は、北朝鮮人が生産された麻薬の大部分を最寄りのロシア領土である沿海地方を経由して輸送を試みている以上、この問題に密接に従事している太平洋艦隊防諜部も確認している。

 FSB太平洋艦隊局のデータによれば、外貨獲得に向けられた北朝鮮のこの国家プログラムの存在の最も明白な事例は、1994年6月に北朝鮮特務機関により行われたロシア領土での売却を目的とした大量のヘロインの沿海地方領域への発送に関する行為である。2人の北朝鮮市民の逮捕の際に押収された総重量8,065gの麻薬は、351gずつのブロックにプレスされた白色の細かい粉末を含む23のポリエチレン製の袋に工場で包装されたヘロインである。

 クロマトグラフ調査の結果得られたデータは、原材料であるモルヒネ(調査された物質においては、アセチル化コデインが存在しない。)の並外れた純度、並びに合成物の高い品質(一アセチル化モルヒネが存在しない。)について証明している。鑑定の結論によれば、調査されたヘロインは、高い精製度の南西又は東南アジアの(ホワイト)ヘロインに属し得る。ブロック成型、その包装の品質、並びに麻薬の純度に基づけば、それが産業条件下で製造されたとの結論を下すことができる。

 1994年6月の北朝鮮密輸団の逮捕は、北朝鮮領土からの麻薬ビジネスの規模だけではなく、納入される麻薬の品質においても変化を証明し、さらに、北朝鮮の国家機構による当犯罪行為の直接支援に関する情報を提示した。

 逮捕者に尋問したヘロイン1kg当たりの価格は、50,000米ドルに達した。上記事件まで、北朝鮮市民から押収された麻薬の最大量は、1989年に北朝鮮からロシアに向かう鉄道車両の1つで摘発された9kgの阿片原料だと考えられていた。

2.地理的経緯

 北朝鮮は、70年代初めに、国外での麻薬取引に従事し始めた。当初、ヘロインは、「黄金の三角地帯」であるタイ、ラオス、ミャンマー、並びにレバノンで購入された。1976年、エジプトにおいて、シリアに向かう北朝鮮外交官の外交行李の中から、ハッシシュ400kgが発見された。その結果、2人の外交官が国外追放された。これは、国際的に広く知られることとなった公的北朝鮮人拘束の最初の事例だった。最近、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、ネパール、インド(計24ヶ国)において、北朝鮮市民による麻薬の約30件の密輸事例が指摘された。当活動に対して、50人が退去又は逮捕された。

 80年代初め、北朝鮮側からの麻薬取引に関する活動は、国際社会によるその辛辣な非難と関連して中断され、80年代後半に再開された。

 北朝鮮では、70年代から、開城薬草大学、寧辺市の薬草工場、(江原道)川内郡の農業企業の農場において、少数のケシが栽培されていた。1989年から、北部の両江道及び咸鏡北道の山地において、総面積130万坪(約492ha)で栽培され始め、現在、生産量は、3tから30tへと10倍に増加した。1992年、ケシの栽培に従事する専門会社「ペクトラジ」の創設に関する金日成の個人的指示が下された。

 北朝鮮におけるケシ精製の主要場所は、以下の通りである。
 

bullet清津市に位置するナナム製薬工場。ケシの精製に関する生産ラインは、最近、年間生産力100tにまで達した。

bullet平安北道寧辺市、薬草工場

bullet黄海南道開城市、開城薬草大学

 上記企業は、ヘロイン、モルヒネ、コデインを製造している。

 麻薬取引の組織には、朝鮮労働党に所属する対外貿易公団「ヌンナ」、「888」が従事している。公団職員は、最近、中国、ロシア、香港、ドイツ、英国において麻薬ビジネスを専門とする犯罪集団との接触を確立しようとしている。国外への麻薬発送が実施されている主要拠点は、清津市であり、そこから、モスクワ、北京、シリア、キューバに向かう。モスクワからは、欧州、インド、パキスタン、スーダン、北アフリカに。北京からは、北東アジア諸国に。香港からは、バングラディシュ、ネパール、パキスタン、アラブ首長国連邦に。シリアを経由して、ヨルダン及びエジプトに。キューバを経由して、中米諸国に。在日朝鮮人(「朝総連」)の助けにより、日本に。国境を越えた麻薬の発送のために、北朝鮮人は、外交ルートを積極的に使用している。

3.人民の金は、どこへ行くのか?

 麻薬売価から得た資金は、宣伝活動の保障、外交代表部の維持、食糧の購入、最近では、武器、近代的機材、核を含む戦略原料の購入のために使用されている。

 北朝鮮の党、政府及び軍指導部の一連の公務員は、朝鮮半島の予想される不安定化の場合に備えて、米ドル、宝石その他の財物の備蓄に努力している。

 個々の情報によれば、北朝鮮領土には、現在、他国への売却用の2tのヘロインが貯蔵されている。ヘロインは、在日朝鮮人の金により、タイで購入された。同説に従えば、タイから北朝鮮への麻薬の輸送は、海路及び中国領土を非合法に経由して実施されている。

 1994年、この貨物の一部の売却の際に北朝鮮人が逮捕されなかったら、計2tのヘロインが、組織された密輸ルートにより、沿海地方領域に入ったはずである。

 一般に、北朝鮮から他国への密輸における優先度は、北朝鮮船舶によるその運搬及び領海外での「買い手」の船舶による積み換えに与えられている。より危険と考えられているのは、他の種類の輸送に見せかけた麻薬の国境横断である。この際、優先度は、鉄道に付与されている。

4.国際友好の道程

 ロシア領土において、麻薬の拡散には、主として、ハバロフスク及び沿海地方企業の労働力として投入された北朝鮮市民が使用される。一般に、彼らを通して、少量の医療用麻薬が流入している。大多数の麻薬は、80年代中盤から、契約により伐採で働いていた大規模な北朝鮮移住者がいたハバロフスク地方のチェグドムィン及びトゥルマ町からロシア極東領域中に拡散した。北朝鮮人労働者は、ロシアへの出国前、麻薬を受け取り、ロシア領土で売却しなければならない。麻薬の売却又は何らかの物的財貨との交換に関する取引実施の際は、北朝鮮特務機関の代表が必ず立ち会っていた。手渡された金で、各種機材及び設備が購入され、後に、北朝鮮に.送られた。

 その外、全ての朝鮮人移住地には、麻薬含有薬剤を含む医薬品を北朝鮮から直接受け取っていた独自の医師がいた。特に、衛生車において、沿海地方内務局麻薬不法流通対策課により、9kgの阿片原料が発見された。北朝鮮労働者の力による伐採作業の中止後、沿海地方への薬草の定期納入に関する彼らの「仕事」の大部分は、彼らの同郷人の農業労働者が受け持った。

 今年だけで3度、彼らは、150g、2.5kg及び23kgの阿片原料の売却の試みの際に拘束された。さらに、2番目の事例においては、商品を提供したのは、在沿海地方北朝鮮農業代表であった。この作戦を行ったFSB沿海地方局職員の証言によれば、朝鮮人側からの取引に対して、高度のプロフェッショナリズムを発揮した監視が行われた。最新の事件は、つい最近の11月6日に発生し、沿海地方のハサン検問所において、ロシアの国境警備班により、旅客列車「平壌−モスクワ」の客室から、重量23kg、価格80万ドル以上の大量の密輸阿片原料が発見された。貨物は、北朝鮮林業省職員、50歳の北朝鮮市民に属していた。

5.ある殺人の痕跡

 ロシア領土で北朝鮮市民が働いている事実上各部門において、麻薬取引の事実が記録され、さらに、ロシアの特務機関は、各事件において、売人が「ロシア語の教育を良く受け、上手く話す」ことを指摘した。

 北朝鮮から沿海地方を経由した麻薬の取引及び発送問題の調査には、10月1日にウラジオストクで非常にプロの手口で殺された在ウラジオストク韓国領事チョ・ドゥクキンが従事していた。北朝鮮からの向精神剤の納入ルートは、韓国、米国及び日本の特務機関の高い関心の対象となり、当然、自国の麻薬市場における北朝鮮製品の出現を恐れている。

 捜査は、実際、特別な結果なしに継続されており、さらに、法保護機関は、今まで、殺人の捜索における北朝鮮説を否定しなかった。彼らがまだ発見されておらず、何のために領事が殺害されたかについて、話せる者がいない可能性は大いにあり得る。11月5日に「平壌−モスクワ」列車で拘束された北朝鮮林業省職員、北朝鮮市民 李エクシクが、既に何も話せないように。2日後の11月7日、彼は、スラビャンカ町の自分の一室で死体で発見された。頭を毛布でくるみつつ、彼は、囚人タオルを帯状にちぎり、それから細い縄を編み、その後、首を吊っていた。

P.S.:先週、11月16日、ロシアの法保護機関により、在ハバロフスク北朝鮮農業代表部職員、北朝鮮市民から、5kgの阿片が押収され、通関検査の際、3kgの麻薬が彼から、さらに2kgが彼自身が語った秘密の隠し場所から発見されたとの報道が入った。

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最終更新日:2004/03/19

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